NHK朝ドラ『ばけばけ』に登場する松野司之介(まつの つかさのすけ)は、ヒロイン松野トキの父親です。
松江藩の上級武士の出身でしたが明治維新後に家禄を失い、時代の荒波に翻弄されます。商売に失敗しダメな親父の姿をさらすことになりそうですが。それでも娘に「かっこいい」と思われたい一心で生きる姿は、多くの視聴者の共感を呼ぶでしょう。
史実との違いや、ドラマならではの描かれ方にも注目です。
松野司之介とは?ドラマでの父親像

ばけばけ 松野家系図
松野司之介(まつの つかさのすけ)は、松野トキの父親。松江藩の上級武士出身です。明治維新後に身分と収入を失いました。
それでも家族をなんとか養おうと慣れない商売に手を出しますが思うようにいかず次々と失敗。とうとう代々受け継いできた家も失くしてしまいます。い着る物も食べ物も粗末になる。そんな中でも娘にかっこいい父親と思われたい。
ただそれだけを胸に不器用ながらも必死に奮闘する司之介。そんな彼の生き様はダメな部分も含めて、どこか魅力的で目が離せません。果たして彼は、娘にとっての「かっこいい父親」になれるのでしょうか?
モデルとなった稲垣金十郎の生涯
松江藩の上級武士の家に生まれる
『松野司之介』のモデルになった人物、それが稲垣金十郎です。彼の生涯は明治維新によって大きく揺れ動くことになります。

稲垣金十郎のイメージ
安定した武士の暮らし
金十郎は、1841年に松江藩の武士、稲垣万右衛門の息子として生まれました。家柄は上級武士のなかでは下の方でしたが、それでも100石の収入があり、暮らしには困らなかったようです。後に養女となったセツは、幼い頃の稲垣家での生活を「豊かな暮らしだった」と語っています。このことから、稲垣家は裕福だったことがうかがえます。
成人した金十郎は京都で警護の仕事につき、出雲大社の神職の娘であるトミと結婚します。二人の間には子どもがいなかったため、1868年(慶応4年)に親戚の小泉家から生まれたばかりのセツを養女に迎えました。セツは、稲垣家より身分が高い小泉家の生まれだったため「お嬢」と呼ばれ、大切に育てられました。金十郎一家はセツをかわいがり、武士の家ならではの行事もすべて経験させ、何不自由ない子ども時代を過ごさせてあげたのです。
激動の時代へ
しかし、幸せな時間は長く続きませんでした。1875年(明治8年)に「家禄奉還」という制度が始まると、金十郎は武士としての身分と収入を一度に失ってしまいます。多くの元武士がそうであったように、金十郎も商売を始めましたが、武士の経験しかなかった彼にはうまくいきませんでした。
父・万右衛門は髷を落とさず武士の誇りを持ち続けましたが、金十郎は武士の地位にそこまでこだわっていなかったようです。それでも、武士として育った彼には、激変する明治という時代を生き抜く術がありませんでした。事業に失敗した金十郎は、先祖代々住み慣れた屋敷を出て、寂しい場所へと引っ越します。セツが小学校を卒業する頃になっても貧しい生活は変わらず、40歳を過ぎても時代についていけなかったのです。
家族を支える娘
学業が優秀だったセツも、進学をあきらめて働きに出ることになります。こうして、一家の生活は妻のトミと娘のセツの肩にかかることになりました。
その後、金十郎は士族の前田為二を婿養子に迎え、セツと結婚させました。しかし、為二は貧しい生活に耐えられず家を出ていってしまいます。セツは離婚し、旧姓の小泉姓に戻りました。そして1891年、ラフカディオ・ハーンと出会い、結婚することになったのです。
1900年(明治33年)、稲垣金十郎は59歳でその生涯を閉じました。彼の人生は、明治維新によって没落した武士の典型だったと言えるかもしれません。
演じるのは岡部たかしさん
松野司之介(まつの つかさのすけ):#岡部たかし
トキの父。
松江藩の上級武士だったが、時代が明治になると収入がなくなり、苦しい貧乏生活に。
愛する家族のために不器用ながら奮闘する。
トキに「かっこいい」と言われたい!#ばけばけ #9月29日スタート pic.twitter.com/OubC3yRCV8— 朝ドラ「ばけばけ」公式|9月29日(月)放送開始 (@asadora_bk_nhk) August 5, 2025
松野司之介を演じるのは岡部たかしさん。『ひよっこ』『なつぞら』『エール』『ブギウギ』『虎に翼』など数多くの朝ドラに出演。今回演じる司之介は「誇り高いけれど不器用で時代に翻弄される父」という人物像です。
岡部たかしさんが演じると「いかにもダメ親父」という印象がありますね(それだけ説得力があるということです)。どのような父親になるのか楽しみです。
おそらく、本当にどうしようもない人物ではなく、努力はするものの時代や状況に振り回される不器用さや気の弱さが目立つ、憎めない父親ではないでしょうか。
以前『ブギウギ』のときはあほのおっちゃんを演じ。本当にダメなおやじの雰囲気でしたが。『虎に翼』で演じたヒロインの父・猪爪直言は気が弱く少し情けない部分はあるものの、仕事のできないダメ親父ではなく、エリートサラリーマンとしての父親像でした。
今回演じる司之介は武士としての誇りを大切にしながらも、時代の変化にうまく対応できない不器用なお父さん。かっこいい父親なのか、それともダメな父親なのか。
そのどちらにもなりうる人物を、岡部さんがどう演じるのか今からとても楽しみです。
見どころ・注目ポイント予想
時代に翻弄される父親の姿
松野司之介は時代の波に翻弄され、取り残されてしまいます。仕事もうまくいかない、でもどこか憎めない、愛すべき父親として描かれそうです。娘のトキとどんなやり取りを見せてくれるのか、今から楽しみです。
親子関係はどうなる?
史実では養女だったトキですが、ドラマの中ではどのような設定になるのでしょうか。実の親子のまま描かれるのか、それとも途中で養女であることが明かされるのか、気になるところです。
「かっこいい父」になれるのか?
物語が進むにつれて、司之介が「かっこいい父親」へと成長していくのか、それとも愛すべきダメ親父のままなのか、その変化も物語の大きな見どころになりそうですね。
まとめ
モデルとなったのは稲垣金十郎という人物で、彼は没落した士族の典型とされています。史実では、主人公トキのモデル・小泉セツを養女に迎えました。
こうした背景を知ると、ドラマで描かれる父娘の絆や、ダメ親父だけど愛情深い司之介というキャラクターを、もっと深く楽しめそうですね。
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この記事では松野司之介について紹介しました。『ばけばけ』には他にも個性的な人物が登場します。登場人物の背景を知ると、物語をさらに深く楽しめますよ。
気になる人物像や史実モデルを合わせてチェックしてみてくださいね。
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