『ブラッサム』第3週「化粧と、初恋」では、小学校の代用教員になった珠が、同僚の島村辰彦に恋をします。子供たちに勉強を教え、夏休みには化粧も覚えた珠ですが、島村との恋愛が学校に知られ、教師を辞めさせられてしまいました。
珠のモデルになった宇野千代も女学校を卒業して小学校の教師になり、同僚との恋愛を理由に退職しています。
珠の初恋は、実際の千代の恋愛とどこが同じだったのでしょうか。ドラマのあらすじとともに、千代が教師として働いていたころの出来事を紹介します。
ブラッサム第3週「化粧と、初恋」のあらすじ
初回放送日:2026年10月12日(月)11話〜10月16日(金)15回。
代用教員となった珠と子供たち
大正3年(1914年)、珠は尋常小学校の代用教員として働き始めました。受け持ったのは、2年生のうち勉強の苦手な子供たちが集められた学級です。教頭の上野からは適当に教えればよいと言われますが、珠は子供たちに根気よく勉強を教えます。
初日には遅刻してきた花田次郎が算術のできないことを同級生に笑われ、教室から逃げ出してしまいました。珠はそんな次郎にも勉強を教え、少しずつできることを増やしていきます。
ところが、1学期の終わりになると、次郎は学校を休みがちになりました。珠は次郎のことを心配しますが、同僚の教師たちは余計なことをしないようにと忠告するばかりです。
一方、幼なじみの梅は結婚し、女学校時代の友人・忍は婦人記者を目指して東京へ行くと話します。
友人たちが結婚したり、仕事のために上京したりするなか、珠も今までとは違う自分になりたいと思うようになりました。そして夏休みには化粧を覚え、新学期から化粧をして学校へ通い始めます。
化粧をかばった島村先生との恋
新学期、化粧をして出勤した珠は上野教頭から注意されてしまいます。その場で珠をかばったのが、新しく赴任してきた島村辰彦でした。
島村は珠が勉強の苦手な子供たちにも熱心に教えていることを認めてくれます。子供への教え方についても考えが似ていたため、二人は次第に親しくなりました。珠は島村を好きになり、その思いを文章に書くようになります。
ある日、珠が落とした紙を次郎が拾い、島村に届けてしまいました。そこには島村への好意が書かれていたのです。
その後、島村が病気で学校を休むと、珠は島村の家を訪ねて食事を作り、身の回りの世話をしました。島村も珠の訪問を喜び、二人はさらに親しくなります。
次郎も以前より勉強に取り組むようになり、教師としても恋愛でも楽しい日々を過ごしていた珠。ところが、島村の家から帰るところを人に見られたことで、二人の関係が学校に知られてしまいます。
珠だけが免職となり、島村からも別れを告げられる
島村との恋愛が問題になり、珠は学校から謹慎を命じられました。それから1か月が過ぎても、学校からは何の連絡もありません。
終業式の日、珠が久しぶりに学校へ行くと、自分の教室ではすでに別の教師が授業をしていました。
上野教頭から告げられたのは免職でした。島村はそのまま教師を続けられるのに、珠だけが仕事を失ってしまったのです。
珠は島村の気持ちを確かめようと手紙を書きます。しかし、返ってきたのは、二人の関係は間違いだったので、もう手紙を送らないでほしいという返事でした。
納得できない珠は島村の家を訪ねますが、島村はもう何とも思っていないと言い、珠が料理に使っていた鍋や包丁まで返してしまいます。
学校を辞めさせられたうえに、好きだった島村からも拒絶され、珠の初恋は終わりました。
第3週の登場人物とモデル
第3週では、珠が勤める小学校の教師や子供たちが登場します。珠のモデルは宇野千代ですが、島村辰彦などの登場人物については、千代の自伝や実際の家族関係からモデルと考えられる人物を紹介します。
葉野珠(はの たま)
演:石橋静河。モデル:宇野千代。
尋常小学校の代用教員になった珠は勉強の苦手な子供たちにも熱心に教えています。夏休みに化粧を覚え、新しく赴任してきた島村に恋をしますが、その恋愛を理由に学校を免職となりました。
島村から別れの手紙が届いたあとも、直接会って本当の気持ちを確かめようとします。
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島村辰彦(しまむら たつひこ)
演:工藤阿須加。モデル候補:宇野千代が教師時代に恋をした同僚教師。
珠の勤務先に赴任してきた教師です。珠の化粧をかばい、子供たちへの教え方も認めたことで、珠と親しくなりました。しかし二人の関係が学校に知られると、珠に別れを告げます。
宇野千代も教師時代に同僚と恋愛をしていました。千代は自伝『生きて行く私』で、相手を「佐伯正夫」という名前で書いています。ただし、島村辰彦のモデルがこの人物だと公式に発表されているわけではありません。
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花田次郎(はなだ じろう)
演:渋谷そらじ。
珠が受け持つ学級の児童。算術が苦手で、同級生に笑われて教室から逃げ出してしまいますが、珠に教わるうちに勉強に取り組むようになります。
珠が落とした紙を拾い、島村へ届けたのも次郎でした。本人は珠の恋を手伝うつもりだったのかもしれませんが、その紙には珠の島村への思いが書かれていました。
角田忍(かくた しのぶ)
演:木竜麻生。
珠の女学校時代の友人。自分にも縁談がありましたが、婦人記者になるため東京へ行くと決め、珠にそのことを伝えます。
幼なじみの梅が結婚する一方で、忍は仕事を求めて東京へ向かいます。二人の話を聞いた珠も、これから自分がどう暮らしていきたいのか考えるようになりました。
葉野リョウ(はの りょう)
演:国仲涼子。モデル候補:宇野リュウ。
珠を育てた継母です。教師になった珠から給料を受け取り、娘と一緒に暮らしています。
珠が学校を辞めさせられた夜には、島村を好きになったことや、何を間違えたのか分からないという娘の話を聞いていました。
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上野教頭(うえのきょうとう)
演:阪田マサノブ。
珠が働く小学校の教頭。珠には勉強の苦手な子供たちを適当に教えればよいと話し、化粧をして出勤すると注意しました。
島村との恋愛が知られたあとは珠の服装や行動を非難し、終業式の日に免職を告げます。島村は教師を続けているのに、珠だけが辞めさせられることになりました。
第3週の出来事と史実との違い
珠の化粧や島村との恋愛や教師の仕事を失ったことは、宇野千代の実際の経験をもとにしています。ただし、恋文を渡した方法や退職を告げられたときの様子などはドラマとは違うところもあります。
珠の化粧と千代が夏休みに覚えた白粉
珠は夏休みに化粧を覚えて新学期から化粧をして学校へ行くようになりました。実際の宇野千代も教師になって最初の夏休みに化粧を覚えています。
きっかけは、実家の風呂から上がったときのことでした。継母リュウの白粉を自分の顔につけてみると、鏡に映った顔が今までとは違って見え、千代は喜んだといいます。
それから千代は、学校へ行くときにも化粧をするようになりました。
当時の千代は顔にクリームや白粉を塗るだけでなく、口紅や頬紅も使っていました。化粧にかける時間は約45分。月給8円のうち、毎月1円50〜60銭を化粧に使っていたといいます。
給料の約2割を化粧に使っていたのですから、当時の千代がどれほど化粧に夢中になっていたかがうかがえます。
ドラマでは化粧をしてきた珠を上野教頭が注意し島村がかばっています。
千代の場合も、化粧をして登校すると生徒や同僚は驚いたようですが、化粧を禁じられたという話はありません。
教師になって最初の夏休みに化粧を覚えたことは同じですが、教頭から叱られ、同僚の男性教師にかばわれる場面はドラマ独自の描写です。
次郎が拾った紙と千代が生徒に届けさせた恋文
ドラマでは珠が島村への思いを書いた紙を落とし、次郎が拾って島村に届けました。珠は思いがけない形で自分の気持ちを知られてしまいます。
実際の千代は自分で生徒に頼んで手紙を届けてもらっています。
千代は自伝『生きて行く私』で、授業中に同僚の教師へ手紙を書き、書き取りをしていた子供を呼んで、隣の教室まで届けさせたと振り返っています。
しかも、その手紙に書いたのは好きだという告白ではありませんでした。その夜、よい物を持って相手の家を訪ねるという知らせだったのです。
千代が持っていったのは、小さな布をつなぎ合わせて作った座布団でした。切り昆布の煮物を届けたことも書いています。
ドラマでも珠は島村の家を訪ねて料理を作っています。千代も好きな相手の家に通い、手作りの品や食べ物を届けていました。
千代が好きになった相手は師範学校を卒業した訓導でした。二人は同じ学年を担当していたため、授業の計画を持ち寄り、子供たちへの教え方について話し合っていたといいます。
珠も島村と子供たちへの教え方について意見が合い、それが親しくなるきっかけになりました。
ドラマの珠は偶然落とした紙から恋心を知られましたが、千代は自分から手紙を書き、生徒に頼んで相手へ届けてもらっていたのです。
珠への免職通告と千代が学校を辞めた日
珠は島村との恋愛が学校に知られ謹慎を命じられた末に免職となりました。
宇野千代も同僚教師との恋愛が町で評判になり、学校を辞めることになっています。
ただし、退職を告げられたときの様子はドラマと違います。
珠は1か月も学校から連絡がなく、終業式の日に出勤すると、すでに別の教師が授業をしていました。その場で上野教頭から免職を知らされます。
千代は事前に校長室へ呼ばれ、学期末で辞めてもらうと告げられました。校長は郡役所からの命令なので、どうにもならないと説明したといいます。
千代は学校を辞める最後の日、晴れ着を着て出勤しました。
しかし、子供たちの前に出て別れの挨拶をすることは許されません。千代は用務員室で待つことになり、校長が生徒たちに、宇野先生は東京の学校へ進学すると説明しました。
千代は後年、最後の日に晴れ着を着ていった理由について、好きな相手にきれいな姿を見てもらいたかったからだと振り返っています。
教師を辞めさせられる日でさえ、好きな男性のことを考えていたのです。千代自身は学校から辞めるよう求められたと書いていますが、学校の記録では本人の願いによる退職として扱われていました。
女学校を卒業した珠が教師になれた理由
師範学校を卒業しなくても働けた代用教員
珠は女学校を卒業したあと、小学校の代用教員になりました。
当時の小学校には、師範学校を卒業した教師のほかに、代用教員という先生がいました。
師範学校は教師を養成するための学校です。卒業して教員資格を得た人たちは、訓導として小学校で授業を受け持っていました。
一方、正規の資格を持つ教師が十分に確保できない学校では、代用教員も授業を担当していました。女学校を卒業した女性も、代用教員として働くことができたのです。
宇野千代も師範学校には通っていません。
1914年、岩国高等女学校を卒業した千代は、川下の小学校で代用教員として働き始めました。月給は8円でした。
ドラマで珠が2年生の学級を任されたように、代用教員も子供たちに毎日の授業を教えていました。
千代が恋をした同僚は師範学校を卒業した訓導でしたから、教師になるまでに受けた教育や資格は千代と違っていたのです。
当時の教師に求められた品行
大正時代の教師は、授業を教える能力だけでなく、普段の服装や行動についても厳しく見られていました。
明治時代から教員の品行を確かめる制度や、教師として守るべき心得が定められていたためです。学校の外での行動が問題にされることもありました。
ドラマでは、珠が化粧をしただけで上野教頭に注意されています。さらに島村との恋愛が知られると、珠の服装や行動が問題とされ、免職になってしまいました。
男性の島村は教師を続けているのに、女性の珠だけが辞めさせられたのです。
実際の千代は、同僚教師との恋愛が町で評判になったことで学校から退職を求められました。相手の男性教師は後日、山奥の学校に異動になっています。
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