『ブラッサム』の葉野リョウは珠の実母ではなく珠の父・清治が再婚した相手。珠にとっては継母です。
そのリョウが珠のことを「珠」ではなく「珠さま」と呼んでいます。母親が娘に「さま」を付けるので「おやっ?」と思いますよね。
でもリョウは珠を避けているわけではなく、気にかけながら大切に接しています。先妻の娘なので遠慮しているとも考えられますが、珠のモデルになった宇野千代と継母リュウの関係を見ると、それだけではなさそうです。
なぜリョウは珠のことを「珠さま」と呼ぶのか?演出の意図と、モデルになった宇野千代の育った環境から考察してみました。
宇野千代は「千代さま」と呼ばれて育った
周囲からは千代さまと呼ばれていたことがある
宇野千代は幼いころに実母を亡くしました。その後しばらくは父の実家である宇野家に預けられています。宇野家は代々造り酒屋を営んでいた裕福な家でした。千代は「高森の宇野」と呼ばれた家の娘として育ち、周囲から「千代さま」と呼ばれていたといいます。
その後、父がリュウと再婚すると、千代は父と継母が暮らす家で生活するようになりました。千代が周囲から「千代さま」と呼ばれていたことは分かっています。
でも、継母のリュウが普段から「千代さま」と呼んでいたのかどうかは分かっていません。
リュウ本人は千代を「千代さま」と呼んでいたのか?
史実のリュウが千代を「千代さま」と呼ぶことはなかったでしょう。
千代の回想には、リュウが千代を「お前」と呼んでいる場面があります。
リュウが一度家を出たとき、千代が迎えに行きました。後になってそのときのことを話したリュウは、千代に「あのときお前が迎いにおいでざったら、わしゃあ、この家にはもどらざったのに」と語っています。
この会話を見ても、娘を「千代さま」と呼ぶような関係ではなかったようです。他の母親と同じように呼んでいたのでしょうね。
千代とリュウの関係
継母リュウは千代を大切にしていた
宇野千代は後年、継母リュウとの暮らしについて書いています。リュウは再婚したあと自分の子供たちも産みました。それでも千代と実子にまったく同じように接していたわけではありません。
千代はリュウが自分と実子との間に「誰の目にもわかる間隔をはっきりと置いていた」と振り返っています。この言葉だけ聞くと母娘の間に距離があったようにも聞こえます。でもよく話を読んでみると、リュウは千代を冷たくしていたわけではありません。
食べ物を家族に分けるときはリュウは一番よいものを千代のために取っておきました。そして自分の子供たちには「これは姉さまのものじゃから」と言っていたそうです。千代が先妻の娘なのであり、自分の子供たちにとって年上の姉であることを大切にし、弟や妹たちにも「姉さま」と呼ばせていました。
先妻の娘だから距離を取ったというより、先妻の娘だからこそ大事にして自分の子供たちにも敬意をもって接するよう教えていたのでしょうね。
千代はリュウを本当の母親だと思っていた
幼い千代はリュウが継母だとは知りませんでした。長い間、本当の母親だと思って育っています。そのためリュウが一番よい食べ物を千代のために残してくれたり、弟や妹たちから「姉さま」と呼ばせたりしていても、それを特別なことだとは思っていなかったようです。
母親が長女の自分を大切にしてくれる。それが普通だと思っていたのでしょう。成長してからリュウが継母だったと知り、千代は初めてリュウが自分と実子に同じ接し方をしていなかった理由に気づいたのだと思います。
リュウは実子ばかりをかわいがるのではなく、先妻の娘だった千代にもきちんと愛情を向けていました。自分の子供たちにも千代を姉として大切にするよう教えていたのです。
「珠さま」はドラマ独自の呼び方?
『ブラッサム』の「珠さま」は、宇野千代の生い立ちをもとに脚色した結果。あのような呼び方のなったようです。
宇野千代は周囲から「千代さま」と呼ばれて育ちました。継母リュウも自分の子供たちに千代を「姉さま」と呼ばせ、一番よい食べ物を千代のために残していました。
リュウは千代を実子とまったく同じように接したわけではありませんが、冷たくしたわけでもありません。先妻の娘だった千代を大切にし、自分の子供たちにも姉として敬うよう教えていました。
史実では千代は長い間リュウを実母だと思っていましたが。
ドラマの葉野珠はリョウが継母だと知っています。史実のリュウがもっていた千代を特別扱いする感じを、ドラマの視聴者に分かりやすく伝えるための表現として「珠さま」が使われたのではないでしょうか。
母親が娘を「珠さま」と呼べば普通の実母と娘という関係でないのはわかります。それと同時に、リョウが珠をとても尊重する感じで接しているのも伝わります。
珠は清治の娘として、リョウがこの家に来る前から暮らしていました。リョウにとって珠は、自分の実子とは違う事情を持つ娘ですが、それでも大切な家族なのでしょう。
まとめ
『ブラッサム』では、リョウが珠をなぜ「珠さま」と呼ぶのか、今のところ詳しく説明されていません。
でもモデルになった宇野千代の生い立ちを見ると参考になりそうな話があります。
宇野千代は裕福な造り酒屋の宇野家につながる娘として育ち、周囲から「千代さま」と呼ばれていました。継母リュウも自分の子供たちに千代を「姉さま」と呼ばせ、一番よい食べ物を千代のために残していました。先妻の娘だからと冷たくしたのではなく、自分の子供たちにも千代を大切な姉として接するよう教えていたのです。
でもリュウ本人は千代を千代さまとは呼んでいなさそうです。事実、後年の会話では千代を「お前」と呼んでいます。
『ブラッサム』の「珠さま」は史実にあった呼び方を再現したのではなく、リュウが千代を大切にしていた話を形を変えてドラマに取り入れた呼び方なのかもしれません。
「珠さま」という呼び方からは、リョウが珠を先妻の娘だからと遠ざけるのではなく、清治の大切な娘として尊重し、家族として大切にしていることが伝わってきます。
関連記事
ブラッサム:葉野リョウ(国仲涼子)のモデルは宇野千代の育ての母
朝ドラ「ブラッサム」登場人物のモデル一覧!葉野珠の家族・夫・文豪は誰?
ブラッサム:葉野珠(石橋静河)のモデル 宇野千代とは?生涯・結婚・代表作を紹介
関連書籍

コメント